ぱぱがしんだ日

ぱぱがしんだ。

いや、亡くなったわけではない。こんなこと書くのは不謹慎だろうか。しかし確かに僕の中ではしんでしまったのだ。

というのは、ある日突然聞かされたぱぱの知りたくなかったこと。聞いていて涙が止まらなくなるほど苦しんだままの話。

僕は家族が大好きだ。

『おまえの家族ってほんと仲いいよなー』

今まで二十年間生きてきてすごく言われてきたこの言葉。そして誇りだった。嬉しかった。

兄弟は3人。そしてぱぱとまま、犬がいて。

小さい頃から旅行や遊びに行く習慣のある家だった。僕たちが大人になるにつれ、それは少なくなりつつもなくなることは決してなかった。それが嬉しくて、楽しかったんだ。

家族でも思い出は数えきれない。それはどこかにいったものや、日常のもの。そのどれもが大切で、絶対に消したくないものになっている。

ぱぱとままはたまに喧嘩はするけど、理想の夫婦だと思っていた。

それがそれだけじゃないと知ったのが今回なんだが、ここではその話はしないでおく。

とにかく僕は、自分の家族が世界で一番幸福なんだと信じて疑ったことはなかった。

もちろんその時間たちが嘘だったことはないとわかっている。すべて本当のこと。

しかし、ぱぱには僕たちがすべてじゃなかったんだと、それだけのことだ。

許せない、だとか、憎む、だとか、

そういう感情ではなく、しんだんだ。

嫌いになったわけじゃない。今も変わらずに好きだ。だけど、今までのぱぱはしんだ。

しんだらもう生き返らないのだ。

つまり今までのぱぱではなくなったということ。

すごくすごく悲しくて悲しくて、考えたくないことがぽんぽんでてきてしまう。

僕にはなにもできない。それが悔しい。

そしてままの苦しみを分けてもらうこともできない。なによりも悔しいのはこれだ。

だけどいま僕にできること。ままのそばにいること。ただそれだけだ。情けないけど、頑張るしかない。

さようなら、今までのぱぱ。もう会うことはできないのが、心の底から、ほんとうに悲しい。今までありがとう。

 

追記:これを書いたのはいちねんまえ、どうしても自分の話にしたくなくて客観視したような書き方をしていた、下書きにひっそりと置いてあった当時の感情。